ラベルのない缶詰の謎

「ラベルのない缶詰をめぐる冒険」アレックス・シアラー

アレックス・シアラーさんはのお話は、
人間味を大切にしている所と、
イギリスらしいシニカルな笑いの部分が気に入っています。

本書では、ラベルのない缶詰という設定が好きでした。
ラベルが剥がれて、中に何が入っているか分からない。
重さや、振ってみた時の音なんかを頼りに
缶詰を選ぶ、賭け的な要素。
ラベルのない缶詰が、丸ごと1つの謎になっているというのは、
大人でもわくわくします。

ストーリーは、もう少し渋めの展開だったらよかったかも。
普通の子どもにでも起こり得そうなお話の方が、
よりリアルでいいかなあと。
でも、子ども向けだと、ある程度ドタバタしていた方が
分かりやすくていいのかなあ・・・?

なあんて思っていたら、
似たような事件が、実際に某国で起きていたんですね。
これが現実的じゃない、と思えるのは、
日本だけなのかもしれません。

それにしても、この装丁画は、最近よく目にします。
米澤穂信さんの“春期限定いちごタルト事件”シリーズや、
舞城王太郎さんの“みんな元気。”、
ミステリフロンティアにも1冊あったなあ・・・。
思わず目を惹かれる装丁画です。

ラベルのない缶詰をめぐる冒険 ラベルのない缶詰をめぐる冒険
アレックス・シアラー (2007/04/25)
竹書房

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探偵役はひきこもり

「青空の卵」坂木司

先日読んだ石持浅海さんの連作短編は、
探偵役が人柱で、大いに驚いたのですが、
今回の探偵役は、ひきこもり。

初めは、安楽椅子探偵とひきこもりを
単純に結びつけてこういう設定にしたのか、
と思っていたのですが、
人間の心の脆さを深く捉え、ミステリに仕立てていた所に
読み応えを感じました。

歌舞伎が出てくるから、というわけではないのですが、
人の脆さを描くという点では、
近藤史恵さんとどこか似ているのかも。

坂木司さん、同名の登場人物は男性なのですが、
ご本人は覆面作家さんなんですね。
作家さんは作品が大切で、
経歴やら性別やらは関係ない・・・と思いつつ、
果たしてどんな方なんだろう?って考えてしまいます。
謎が増えたようで面白いです。

青空の卵 青空の卵
坂木 司 (2006/02/23)
東京創元社

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ひたひたと怖い

「朝日のようにさわやかに」恩田陸

大事にとっておいた恩田さんの新作を読んでしまいました。
好きな作家さんのって、ついつい後回しにしてしまいます。
ご飯のおかずも、好きな物はラストに、という性格です。

恩田さんがあちこちで発表された短編を
かき集めてきたような短編集です。
恩田さんは、様々なジャンルの作品を書きますが、
根底にあるテイストって、
やっぱりホラーなんじゃないかと思いました。

それも、うわっとか、ぎゃ〜っとか、
とにかく驚かされたり、気持ち悪かったりするのではなく、
ひたひたと押し寄せてくる恐ろしさ&不気味さ。
どんなにファンタジックなテーマの物でも、ミステリでも、
どこか暗く怖い。

少なくとも、私にとっては
他のホラー作品よりも余程怖い!
と、感じる物が多いのです。
恩田陸さんが選んだ“新耳袋コレクション”も怖かったなあ・・・。

朝日のようにさわやかに 朝日のようにさわやかに
恩田 陸 (2007/03)
新潮社

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新耳袋コレクション (恩田陸編) 新耳袋コレクション (恩田陸編)
木原 浩勝、中山 市朗 他 (2006/07)
メディアファクトリー

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猫好き度、負けました・・・

「猫、ただいま留守番中」南里秀子

猫は家につく、と言いますが、
環境の変化に本当に弱いですよね。
以前、ペットホテルに預けた事があるのですが、
体重激減、毛並みパサパサの状態で帰宅して、
ショックを受けました・・・。
1日で元に戻ったのですが。

南里さんはキャットシッターさん。
留守宅に、猫のめんどうを見に来てくださるお仕事です。
猫をどこかに預けるのではなく、
住み慣れた家に置いたまま、安心して出掛けられるなんて有り難い!
私の住んでいる地域にもいてくださったら・・・
と、切望してしまいました。

それにしても、私は猫好きを自負しているのですが、
本書を読むと、私の猫に対する愛情なんて
まだまだ甘いと感じられます。
ちなみに同作者の“それいけ、キャットシッター!”も面白かったです。

猫、ただいま留守番中 猫、ただいま留守番中
南里 秀子 (2005/10)
駒草出版

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それいけ、キャットシッター! それいけ、キャットシッター!
南里 秀子 (1999/05)
双葉社

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そういう事ってあります

「しずく」西加奈子

今月は、女性作家さんの短編集を読むことが多いです。
ブログにアップしただけでも、
絲山秋子さん島本理生さん、そして西加奈子さんと3作品。

さらっと辛口な絲山さん、
エキセントリックな島本さんに対し、
西加奈子さんは、わかりやすくて直球勝負な感じがしました。

中でも、“木蓮”と“シャワーキャップ”に共感が持てました。
木蓮の方は、彼の為に自分を曲げてでも奮闘している所が。
シャワーキャップの方は、お母さんのキャラクターが。

ああ、そうそう、そんな事がある、そんな人っている、
そう思いながら読みました。

しずく しずく
西 加奈子 (2007/04/20)
光文社

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キキちゃん、19歳!

「魔女の宅急便 その5 魔法のとまり木」角野栄子

数年置きに、ぽつぽつと発刊されてきた
魔女の宅急便シリーズですが、
その5では、キキちゃんがとうとう19歳になっていました。

児童文学にしては珍しい、高年齢の主人公ですが、
それでもやっぱり小さい子向けで、
やわらかくて優しい言葉づかいで描かれた物語っていう所は、
スタート時から変わっていません。

最近の児童文学では、子どもたちに共感を持たせるためか、
いじめや虐待、塾での悩み、ゲーム的なファンタジーなど、
殺伐とした内容だったり、アニメっぽかったりする物も
数多くあるのですが、
本書からは、昔懐かしい児童文学が感じられました。

小さい子に夢を与えられる
プラス、大人達がどこか懐かしいと思える物語、というポジションが、
宮崎アニメとの共通点なんでしょうね。

魔女の宅急便 その5 (5) 魔女の宅急便 その5 (5)
角野 栄子 (2007/05)
福音館書店

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探偵役は人柱!

「人柱はミイラと出会う」石持浅海

今まで、色々なミステリ(国内)を読んできましたが、
探偵役に、これ程意表を突かれたことは無かったかも。

落語家さんとか、助教授とか、ホスト、囚人、本屋さん、
果ては人間じゃなくなって、安楽椅子!これにもびっくりしたけれど、
探偵役が人柱!人柱て!!
凄い所、きましたね。

長編の、硬派なイメージを持つ石持浅海さんなのですが、
今回は軽快でソフトな感じです。
連作短編も初めてでしょうか。

北村薫の覆面作家シリーズみたいな押さえなのか、
それとも、石持さんは今後こういった路線で行くのか?
どちらにしても、ミステリ部分はちゃんとしっかりしていて
面白かったです。
こういう風習が、本当に残っていたら面白いなあというものも。

人柱はミイラと出会う 人柱はミイラと出会う
石持 浅海 (2007/05)
新潮社

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タイトルがかわいい

「大きな熊が来る前に、おやすみ。」島本理生

エンターテイメント系の本を読んだ後に、
純文・短編・特に女性作家さん、を開くと、
一瞬本が真っ白に見えます。
活字でか!字間&行間でか!!

ゆったりのんびり楽しむべき類の本なのでしょうが、
ついつい、が〜っと読んでしまい、
あっという間の読了・・・。

短編集って、収録作品数が多ければ飽きるくせに、
少ないと(ちなみに本書は3つ)、
何だか物足りなく感じてしまいます。
でも、タイトルがかわいらしい。
あと、装丁&装丁画が綺麗。

収録された3作品の共通点は、
動物と、結構無神経な男の人。
悪気は無いってわかってても、こんな事言われたら、
私だったらキレるな〜って思いました。
島本さんは口の悪い男性が好みなのかなあ。

大きな熊が来る前に、おやすみ。 大きな熊が来る前に、おやすみ。
島本 理生 (2007/03)
新潮社

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初々しいです

「夢を与える」綿矢りさ

3作目にして、人物ドラマ物の長編に挑戦とは、
なかなかのチャレンジャーです。

チャイドルから売れっ子のタレントになった女の子の
成長記みたいな内容なのですが、
どうして人生のその部分を描いたのか?
と、不思議に思うような切り取り具合でした。

人物ドラマ物って、よくあるテーマなのですが、
余程の筆力がないと読み応えを感じません。
最近では、桐野夏生さんの“グロテスク”や、
山田宗樹さんの“嫌われ松子の一生”等、
パワーを感じるぜ、と思わせる作品がありますが、
新人(とは言え3作目だけど)さんには
やっぱりちょっと難しかったんじゃないでしょうか。

最初の数ページでバテてしまったという印象で、
でも初々しかったです。
これだけの長編で、話題性のある作家さんにしては
お値段を抑え気味というのが
出版元の良心だよな〜と思いました。

夢を与える 夢を与える
綿矢 りさ (2007/02/08)
河出書房新社

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さらっとしてます

「ダーティ・ワーク」絲山秋子

連作短編なんだけど、つながり薄め。
短編としても楽しめる、という作品です。

こういう形式、最近よく出会います。
短編集だと、作品数が多くなる程飽きやすいのですが、
つながりが薄くとも連作短編になると、
登場人物やら設定やらが再登場する度に
興味が持続させられるような気がします。

絲山秋子さんは、いかにも女流作家さんって思えるのですが、
他の方々よりもどろどろベタベタしていない所が好きです。
読了感が悪い作品が少ないのがいい。

以前“絲的メイソウ”を読んだのですが、
実に作品そのままの方だなあと思いました。

ダーティ・ワーク ダーティ・ワーク
絲山 秋子 (2007/04)
集英社

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絲的メイソウ 絲的メイソウ
絲山 秋子 (2006/07/22)
講談社

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まさかミステリだったとは!

「赤朽葉家の伝説」桜庭一樹

桜庭一樹さんと言えば、ライト一直線!のイメージ。
ミステリ要素よりもライトノベルズ作家さんって
感覚が強かったため、本を開くまで、
まさか文字ぎっしり&2段組とは!
そしてラストまで読んでみて、
まさかミステリだったとは!
と、驚かされました。
東京創元ですものね・・・。

赤朽葉家という、旧家の女3代を追った長編という、
重たげなテーマなのですが、
桜庭一樹さんらしい文体なので、
すいすいと読むことができました。
従来のファン層である、女子中高生さん達が読んでも、
全然OKなんじゃないでしょうか。

でも、桜庭一樹さんはライトノベルズか、
それとも中編くらいかが
1番読みたくなるような気がしました。

赤朽葉家の伝説 赤朽葉家の伝説
桜庭 一樹 (2006/12/28)
東京創元社

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大人向けファンタジー(和風)

「夜は短し歩けよ乙女」森見登美彦

ああ〜上手いな〜って思いました。
ストーリーもよく計算されているし、
細かい部分までしっかり書き込まれていて、完成度が高い。
凝った脚本の演劇を見ているような気分にさせられました。

正直言って、森見さんの持っている独特のテイストが
これまでは苦手だったのですが、
この作品では、いい具合にマッチしていて、
非常に粋に感じられました。

帯には“恋愛小説”と書いてありますが、
大人が読んで楽しめるファンタジーでもあります。
ジュブナイル向けファンタジーばかり読んでちゃいかんです。

夜は短し歩けよ乙女 夜は短し歩けよ乙女
森見 登美彦 (2006/11/29)
角川書店

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最後まですら〜っと読めました

「冥王星パーティ」平山瑞穂

高校生の頃好きだった女の子に、サイトを通じて再会。
しかもエロサイトに自分の写真をアップしていた!
かつては、かわいくてしっかり者だったはずの彼女に一体何が・・・?
って、実際に有りそうで怖いです。

顔がかわいい、頭もいい。
なのに、変わった男の人ばかり好きになる子っていたなあ。
そっちを選んじゃ絶対ダメだろ!
っていう方ばかり選択しちゃう子も。
彼女たちは今頃どうしているんだろう?
実際に、エロサイトに自分の写真を投稿したりしてる子達も、
実生活では普通に、真面目に暮らしているんだろうなあ・・・
なんて思いながら読みました。

この本、タイトルと装丁写真(絵かと思ったら、写真なんですね!)
からして、SFか??と思っていたのですが、違いました。

平山瑞穂さん、4作目なのですが、
文体が落ち着いていて安定感があり、とても読みやすかった。
実力あるなあと感じました。

冥王星パーティ 冥王星パーティ
平山 瑞穂 (2007/03)
新潮社

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